◯茶室の楽しみ

若い方でも茶の湯に関心がある方は多いのではないでしょうか。和の文化が好き、着物を着ることが好き、伝統的な器や骨董が好き、また茶室や日本庭園が好き等々、様々な楽しみが茶道にはあり、総合芸術と言われている所以です。

本学にある茶室からは、浜松駅前にあるアクトタワーを望むことができ、近代的な遠景と伝統的な茶の湯の世界が融合する空間となっています。また浜松城公園には松韻亭、タワー・ザ・ファースト(高層マンション)にも茶室があり、半径1kmほどの間に少なくとも3つの茶室があることになります。

静岡文化芸術大学 茶室

浜松城公園 松韻亭

https://www.entetsuassist-dms.com/hamamatsu-jyo/facility/shouin.html

タワー・ザ・ファースト茶室

https://www.kimuragumi.work/works/2007/01/post.html 

(木村組ホームページより)

◯ざざんざ織(伊兵衛織)とは

ざざんざ織の流れを汲む伊兵衛織とは、静岡県浜松市旧家高林家でつくられていた絹織物です。 高林家当主の屋号から「伊兵衛織」と名付けられました。 先代伊兵衛は柳宗悦と一緒に民芸運動を進めた人でもあります。糸・染色・柄のそれぞれに強いこだわりを取り入れた織物は白洲正子が愛した着物としても知られています。
https://kimono-support.com/iheori/より

浜松に4件あった「ざざんざ織」の工房は、後継者不足により現在では1件のみとなっています。

伝福連携の可能性

「伝統工芸×福祉」=「伝福連携」は障がい者が伝統工芸品産業の担い手となって活躍する仕組みを指します。労働集約的な手作りの生産活動が、産業として次世代に残っていくことが難しくなっています。コツコツとした手仕事を得意とする障がい者が、福祉制度によって生産活動に参加することで、優れた伝統工芸を持続させる活力になるのではないかと、考え、京都市や奈良市を中心に様々な取り組みが行われ始めています。

浜松の絹織物の継承にも、こういった枠組みを取り入れることも検討できるのではないでしょうか。

○茶道 〜作法について〜

皆様は茶道と聞くと、どのような印象を持たれるでしょうか。私は作法が多く、堅いという印象を持っていました。しかし茶道を習いはじめてから作法の意味を知り、考え方が変わりました。

まず作法の意味について一例ご紹介します。お茶を飲む前に数回、お茶碗を回すのがよく知られていますが、これはお茶が出された際にお茶碗の正面が自分の方を向いていますので、そこに口をつけないようにするためです。こうすることで亭主に対して敬意や謙虚な気持ちを表しています。
次に作法の多さが印象に残ったことをご紹介します。お茶会に出席した際、両隣に他のお客様がいらっしゃるときは、お茶を飲む前に亭主に加えて両隣にもそれぞれ礼をします。一杯のお茶を飲むのに3回も礼をしなければならないのです。しかし、この一人一人に礼をする作法からは人を敬う気持ちが感じられます。

以上のように作法の一つ一つには、意味や気遣いが含まれています。そういったことを考えると堅くみえる茶道も楽しく学べるのではないかなと思います。

※ここでは表千家のお稽古から学んだことを書いています。

こばらぼメンバー F.M.

◯水墨画の魅力

「水墨画」という絵画のカテゴリをご存知でしょうか?

雪舟等楊「秋冬山水図」東京国立博物館蔵
https://www.tnm.jp/modules/r_collection/index.php?controller=dtl&colid=A1398

「水墨画」が完全に画法として成立したのは唐代の中国での話であり、日本への伝来は鎌倉時代あたりだったとされています。これは、当時は中国と日本の間で禅僧の交流が盛んであり、禅と縁の深かった水墨画も同時に持ち込まれたからだと考えられています。

西洋画が風景の忠実な再現を目的とする一方、こちらは描き手の主観的描写を多分に含むという特徴があり、これこそが禅と相性がよくなり、日本でも受容され今日まで伝えられてきた一番の要因ではないかと私は考えています。「外界」そのものではなく、描き手が「自分なりに捉えた外界」にこそ外界の本質を見出し、それを筆と水、それに黒一色の墨というシンプルな用意だけで絵画という形を以て出力した「水墨画」という芸術作品は、現代の自己の在り方について悩む人々に自己定義について一つの有力な選択肢を提供してくれるものと言えるのではないでしょうか。

ここ浜松にもそうした絵画を閲覧したり学べたりする場所は多くあります。精神的に疲れてしまったときなど、何か穏やかな刺激が欲しいタイミングに触れてみるのもいいかもしれません。

クリエート浜松
https://www.hcf.or.jp/facilities/create/access/

くらしときめきアカデミー
https://www.sala-academy.jp/products/list.php?category_id=40006

こばらぼメンバーK.A.

◯おせちを知る

皆さんは、「おせち料理」のなかで、何が1番好きですか。私は、黒豆が1番好きです。

また、「おせち料理」を、皆さんは漢字で書けますか。

「おせち料理」を漢字で書くと、「お節料理」となります。確かに、「おせち」と入力すると、変換候補に、「お節」と出てきますね。

お節料理の「節」とは、1年のうちにある、特に大切な年中行事のことです。そして、本来は、1年のうちの、特に大切な年中行事のときに食べる料理が、「お節料理」でした。

「節」の例として、五節句を紹介します。

五節句
「人日(じんじつ)」 (1月7日)…七草粥を食べて、無病息災を願う行事。
「上巳(じょうし)」 (3月3日)…身のけがれや不浄をはらい、女子の成長を祝う行事。ちらし寿司やはまぐりのお吸い物を食べる。
「端午(たんご) 」 (5月5日)…疫病や邪気をはらったり、豊穣を祈ったりする行事。男子の成長を祝う行事でもある。粽や柏餅を食べる。
「七夕(しちせき)」 (7月7日)…農作物の平穏無事を祈る行事で、そうめんを食べる。
「重陽(ちょうよう)」 (9月9日)…不老長寿を願い、菊酒を飲んだり栗飯を食べたりする。

お節料理は、特に大切な年中行事のときの料理全般を指していましたが、そのうち、特に重要なお正月の料理だけを「おせち料理」と呼ぶようになりました。

お正月に食べるおせち料理には、ひとつひとつに願いが込められています。
例えば、私の1番好きな黒豆には、「まめまめしく暮らせるように」という願いが込められています。

その他のおせち料理にも、様々な願いが込められています。

きんとん(金団)…黄色を黄金に、栗を小判に見立てて、金運上昇を願う。
田作り…昔は、材料のカタクチイワシを、田畑の肥料に使ったことからこの名になった。豊作を願う。
伊達巻…見た目が着物の柄に似ていたことから、衣服に困らないことを願う。
れんこん…穴から向こうが見えることから、将来の見通しがきくという縁起をかつぐ。
海老…「腰が曲がるまで長生きできるように」という長寿の願いが込められている。
数の子…ニシンの卵であり、ニシンは卵の数が多いことから、子宝や子孫繁栄を願う。
昆布巻き…語呂合わせで、よろ「こぶ」に通じる縁起物。

ここに書いたおせち料理以外にも、願いの込められているおせち料理はたくさんありますので、皆さんも気になった料理がありましたら、ぜひ調べてみてください。

こばらぼメンバー N.N.

参考文献
・「五節供に和食を」推進委員会HP (https://gosekku-washoku.jp/)
・田中直美「行事と食文化」 (https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/pdf/08_gyoji.pdf)
・農林水産省「味の再発見! 昔ながらのニッポンの郷土料理 第8回」 (https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1712/characterinformation.html)
・農林水産省「おせちは一年の幸を願う料理。おせちを知って作ってみよう!」 (https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/wagohan/articles/2212/spe12_03.html)
・農林水産省「和食」 (https://ouchidewashoku.maff.go.jp/pdf/book/book-3.pdf)

◯ひな祭りと私たちの生活

 皆様は、3月3日はいかがお過ごしでしょうか。3月3日はひな祭りです。女の赤ちゃんが生まれると初節句としてお祝いされます。

 そもそもひな祭りは、上巳(じょうし、じょうみ)の節句といいます。三月の初めの巳の日という意味で、のち三日に定まり、ちょうど桃の季節であったことから、今では桃の節句という言葉でも親しまれています。起源は、自分の災厄を移して海や川に流した祓いの行事と、平安時代に始まるお人形遊び(ひいな遊び)とが、長い間に結びつきました。また、現在でも続く初節句は、江戸時代から続いているならわしです。

 ひな祭りのお祝いに年齢制限はなく、いくつになっても女の子のお祭りです。では、初節句を過ぎた女の子はどのように3月3日を過ごすのでしょうか。一番に思いつくのは雛人形を飾ることでしょう。その他にも、お寿司とハマグリのお吸い物を食べる文化があり、ハマグリを食べることは女性の貞節を教える意味で使われています。お寿司は新鮮な春の魚介類を食べることで、季節感を味わうためです。

 もしかしたら、多くの方が1度は聞いたことがあるかも知れない、「3月3日以降、雛人形をすぐにしまわないとお嫁に行けない」という言葉。実は、民族的な教育に起源があり、だらしないとお嫁に行けないという躾が元で、雛人形を慌ててしまう必要はないそうです。
 そしてもし、雛人形がその役目を終えたときは供養することもできます。静岡県袋井市にある秋葉総本殿可睡斎では、供養を終えた雛人形たちに新たな命を吹き込み、平成27年から「可睡斎ひなまつり」を開催しています。その大迫力を是非訪れて体験してみてはどうでしょうか。(あえて写真は載せません。)

こばらぼメンバー N.A.

 参考文献
 一般社団法人日本人形協会 上巳の節句(https://www.ningyo-kyokai.or.jp/sekku/momo/)
 秋葉総本殿可睡斎 可睡斎ひなまつり(https://www.kasuisai.or.jp/wp/p27#sub01)